ネット上の情報やSNSの投稿には、鮎の塩焼きに関するいくつかの根強い誤解が存在します。現地を訪れて失望しないために、あらかじめ知っておくべき3つの盲点を整理します。
第一の誤解は、「道の駅の鮎塩焼きは、冷凍品を温め直しただけで美味しくない」という偏見です。確かに過去にはそうした簡易店舗も一部に存在しましたが、現在、清流沿いに位置する人気道の駅(道の駅もてぎ、道の駅美濃白川、道の駅かつら等)では、地元の養殖組合や専属漁師と直結した生簀を完備しています。生きた鮎をその場で活け締めにして串を打ち、大量の炭を使って絶え間なく焼き続けるため、回転率が極めて高く、むしろ一部の観光飲食店よりも鮮度抜群の熱々が手に入ります。
第二の誤解は、「天然鮎であれば、どこで食べても養殖より確実に美味しい」という思い込みです。天然鮎は運動量が豊富な分、個体によって身の脂乗りや水分量に大きなバラツキがあります。さらに重要なのは「焼き手の技術」です。鮎の塩焼きの味の8割は火入れで決まるといっても過言ではありません。天然鮎であっても、炭火の火加減を誤って焼きすぎれば身がパサパサになり、化粧塩の塩梅が狂えば台無しになります。腕利きの職人が丁寧に焼いた極上の養殖鮎は、素人が雑に焼いた天然鮎の味を容易に凌駕します。
第三の誤解は、「鮎は頭や骨、内臓(ワタ)を残すのがマナーである」という認識です。料亭の会席料理など大型の成魚では骨を外す作法もありますが、炭火で時間をかけてじっくり焼かれた若鮎や中型の鮎は、頭からガブリと丸ごと食べるのが最も通好みな味わい方です。特に内臓の苦味成分であるタウリンやアミノ酸は、鮎の塩焼きの醍醐味そのものです。尾びれと背びれの飾り塩を軽く指で払い落とし、頭から骨ごと噛み締めることで、塩気、苦味、脂の甘味が一体となった真の風味が完成します。