長良川の鵜飼は、単なる伝統漁法にとどまらず、時の権力者たちに庇護されながら受け継がれてきた日本の象徴的な文化遺産です。岐阜市長良川うかいミュージアムの見どころは、夜間にしか見られない鵜飼の神髄を、ハイビジョン映像や実物大の展示模型を駆使して白日の下に再現している点にあります。
展示空間の中心となる「ガイダンスシアター」では、横幅の広い大型曲面スクリーンに篝火(かがりび)が川面を照らす幽玄な情景が映し出され、鵜匠の手縄さばきや水中で鮎を捕らえる鵜の動きを間近で観察できます。かつて織田信長が武田信玄の使者をもてなすために鵜飼を披露し、徳川家康が江戸城へ鮎のなれずしを献上させた宮内庁式部職鵜匠の歴史と経緯についても、古文書や精緻な年表を用いて論理的に解説されています。
明治23年(1890年)に宮内省(現・宮内庁)の所管となって以降、現在も長良川の鵜匠は国家公務員待遇の「宮内庁式部職鵜匠」としてその伝統を世襲しています。館内では、鵜匠が着用する麻の「風折烏帽子(かざおりえぼし)」や腰に巻く「藁藁(わらまき)」、鵜舟の構造に至るまで、門外不出とされてきた職人技のディテールを克明に確認できます。