落雷が発生した際、「木の下にいれば直撃を受けない」と考えるのは根本的な誤解です。木は周囲よりも背が高いため、雷を引き寄せる避雷針のような役割を果たします。しかし、問題はその先に起こる物理現象にあります。木に落ちた数万から十数万アンペアに達する巨大な電流は、樹木の表面や内部を通って地面へと流れようとします。その際、木の電気抵抗よりも人間の体のほうが電気を通しやすいため、電流が木から空中を飛び越えて近くの人体へと放電されます。これが側撃雷 メカニズムの正体です。
側撃雷の危険性は直撃雷とほぼ同等であり、心室細動による心不全や重度の全身火傷を引き起こし、即死に至るケースが後を絶ちません。日本大気電気学会や防災関係機関の報告によると、落雷事故 原因のうち、木の下での雨宿りに起因する事故は全体の大きな割合を占めています。「雨に濡れたくない」というごく自然な心理が、皮肉にも雷の最短放電ルートへと自らを差し出す結果を招いてしまうのです。
木から伸びる枝や垂れ下がった葉先も放電ポイントとなるため、「幹に触れていなければ安全」という認識も完全に破綻しています。木の枝葉から火花放電が飛び散る範囲に立ち入っているだけで、致死的な電圧に晒される現実に直面しなければなりません。