三毛猫の最大の特徴である「黒と赤(茶)の同時発現」は、性染色体であるX染色体の働きに深く依存している。猫の毛色を決定する遺伝子のうち、赤色を表現する遺伝子はX染色体上にしか存在しない。メスは「XX」の染色体を持つため、片方のX染色体で黒、もう片方で赤を発現させることが可能だ。これに毛を白くする独立した遺伝子が加わることで、典型的な三毛猫が誕生する。
一方、通常のオスは「XY」の染色体を持つため、X染色体は1本しか存在しない。したがって、理論上オスは黒か赤のいずれか一方しか持ち得ないはずなのだ。しかし、遺伝子の突然変異や受精卵の発育過程における奇跡によって、極めて稀に「XXY」という特殊な染色体構造(クラインフェルター症候群)を持つオスが誕生することがある。その発生確率はわずか3万分の1。最新の動物遺伝学の研究でも、この奇跡的な染色体異常の発生メカニズムは完全には解明されておらず、命の神秘として世界中の研究機関で追究が続けられている。