小林稔侍の人生を語る上で欠かせないのが、温かく堅実な家族の存在です。家族構成は、元キャビンアテンダントであった妻・厚子さん(2017年没)、長男の小林健、長女の小林千晴の4人家族でした。
妻の厚子さんは、20代から30代にかけて小林稔侍が極めて過酷な下積み時代を過ごしていた頃から彼を精神的・経済的に支え続けた糟糠の妻でした。当時のインタビューや関係者の証言によると、目が出ない日々が続いても愚痴一つこぼさず、夫の才能を誰よりも信じて家庭を守り抜いたといいます。それだけに2017年の死別の際、小林稔侍が見せた落胆は深甚なものでしたが、その窮地を救ったのが立派に成人した2人の子どもたちでした。
長男の小林健(こばやし けん)は、1971年生まれの実力派俳優です。高校卒業後にアメリカ留学を経て芸能界入りし、サスペンスドラマや刑事ドラマを中心に硬軟吹き分けるバイプレイヤーとして活躍しています。偉大な父の七光りに頼ることなく、地道なオーディションと現場経験を積み重ねてきた姿勢は、若き日の父親のストイックな背中を彷彿とさせます。
一方、長女の小林千晴(こばやし ちはる)は、1973年生まれの女優として知られています。彼女の代表作といえば、父・小林稔侍の主演作『税務調査官・窓際太郎の事件簿』シリーズです。同作において、主人公・窓際太郎の同僚である矢野小百合役を長年にわたって好演し、劇中では息の合ったコミカルな掛け合いを披露しました。親子であることを過剰に売り物にせず、現場では一役者としてプロフェッショナルの緊張感を保ちながら共演していた姿勢は、当時の撮影スタッフの間でも高く評価されていました。
かつて自身が先輩俳優たちから注がれた情愛を子どもたちへと注ぎ、現在は子どもたちが老境の父を温かく見守る――芸能界にありがちな華美なスキャンダルとは無縁の、誠実で自立した親子関係がそこにあります。