冬の金沢おでんを語る上で絶対に外せない頂点が「カニ面」だ。日本海の冬の味覚である香箱ガニ(雌のズワイガニ)の甲羅に、内子、外子、ぎっしりと詰まった身、そして濃厚なカニ味噌を職人が手作業で一杯ずつ美しく詰め直した贅沢の極みである。
提供時期は極めて短い。資源保護のため香箱ガニの漁期は毎年11月6日の解禁から年末までの約2ヶ月弱に限られる。冷凍保存を工夫して年明けに提供する店舗も一部存在するが、生の鮮度と香りを堪能できるピークは11月中旬から12月末まで。鍋の澄んだ出汁に浸された甲羅から溢れ出るカニのエキスが出汁に溶け出し、最後に出汁を注いで飲む甲羅酒は、一度味わえば記憶から消えない強烈な体験となる。一杯数千円という価格設定ながら、これを食べるためだけに新幹線のチケットを取る価値が間違いなくある。