大海原を回遊する魚類のなかでも、なぜマグロはこれほど過激な身体構造を獲得したのでしょうか。マグロは魚類でありながら、筋肉の熱を逃がさない特殊な血管網「奇網(きもう・奇異網)」を備え、周囲の水温より体温を10〜15度近く高く維持できる内温性を持っています。マグロの最高速度と泳ぎ続ける理由は密接に結びついており、高い筋肉温度を保つことで、瞬発時に時速80kmとも推計される猛烈なダッシュ力を発揮し、広大な外洋でエサを捕食するためです。
さらにマグロは、成魚になると浮き袋(鰾)が退化して極めて小さくなります。筋肉と骨格の比重が海水よりも重いため、推進力を失って胸ビレによる揚力が消えると、飛行機が失速するように深海へ沈降してしまいます。止まることは「酸欠」と「深海への沈没」という二重の死を意味するのです。こうした極限の適応を果たしたマグロの生態と平均寿命を見ると、クロマグロは過酷な遊泳生活を続けながらも20年から30年以上の天寿を全うすることが確認されています。
以下は、呼吸法や浮力調整の違いによる魚類の比較データです。止まると死ぬ魚一覧と、静止しても生存可能な魚の違いを整理しました。