最愛の夫を亡くした失意の底にあった鈴木杏樹を支えたのは、彼女が長年出演を続けていた代表的テレビドラマの撮影現場と、温かい共演者たちであった。中でも、テレビ朝日系の国民的刑事ドラマ『相棒』で主演を務める水谷豊の存在は大きかったとされる。
『相棒』の現場において、小料理屋「花の里」の2代目女将・月本幸子役を演じていた彼女にとって、撮影現場は単なる仕事場を超えた安心できる居場所となっていた。水谷をはじめとするキャストやスタッフ陣は、悲しみを抱える彼女を過剰に特別扱いすることなく、変わらぬ温かさとリスペクトを持って迎え入れたという。
演じることに没頭する時間が、彼女自身の傷ついた心を少しずつ癒やしていく。演劇という表現の場と仲間の存在があったからこそ、彼女は深い暗闇の中から再び前を向いて歩み出すことができたのだ。