日常会話や陸上競技、アメリカの道路標識で使われる「1マイル」を正確にメートル法へ変換すると、1マイル=1.609344キロメートルとなります。日本の計量法においても、国際間取引や特殊な分野を除きヤードポンド法の使用は制限されていますが、対米ビジネスやスポーツ報道では欠かせない指標です。
この数値は偶然生まれた端数ではありません。かつてイギリスとアメリカでわずかに異なっていたフィートやマイルの定義を統一するため、1959年に締結された国際協定によって「1ヤード=正確に0.9144メートル」と定められ、それに基づき「1760ヤード=1マイル」として国際マイルの定義と由来が固定されました。
そもそもマイルの語源は、古代ローマ軍の軍事作戦にまで遡ります。当時の兵士が左足と右足を1歩ずつ踏み出す動作を「1歩(パッスス=約1.48メートル)」と呼び、軍団が1000歩行軍した距離(mille passus:ミッレ・パッスス)がマイル(mile)の原点となりました。「千」を意味するラテン語「mille」が、英語のマイルへと形を変えて現代に受け継がれています。
一方で、18世紀末にフランスで誕生したメートル法は「地球の子午線の4000万分の1」を基準に合理性を追求して作られました。身体のサイズや歩数を基準とするヤードポンド法とメートル法の思想的対立は、200年以上が経過した現在でも国際社会の計測現場に深い爪痕を残しています。