100歳を超えてなお詩作を続けた晩年のまど・みちおが到達した境地は、静寂でありながら生命力に満ちていました。彼は「老い」や「死」を決して忌み嫌うべき敵とは見なさず、宇宙の自然なサイクルの一部として受け入れていました。
「死ぬというのは、無になることではなく、生まれる前の大きな宇宙へ里帰りすること」
身体の衰えをありのままに受け止め、目が見えにくくなれば耳を澄まし、耳が遠くなれば肌で空気を感じる。感覚が研ぎ澄まされる中で紡がれた晩年の詩は、余分な装飾が削ぎ落とされ、命の核だけが光り輝いています。自らの死期を意識しながらも恐怖を抱かず、自然界の一部として還っていくことを穏やかに楽しみにする死生観は、高齢化が進む現代において多くの人々に救いと平穏を与えています。