東北・岩手を代表する盛岡冷麺を語る上で欠かせないのが、みずみずしい果物のトッピングです。夏はスイカ、秋から冬にかけては梨やリンゴが添えられますが、これは単なるデザートの代用ではありません。
最大の理由は、キムチに含まれるカプサイシン(辛味成分)の緩和作用にあります。果物に含まれる豊富な水分と果糖は、カプサイシンによって刺激された舌の受容体を素早く鎮静化させます。辛味の強いスープを飲んだ後に果物をひとかじりすると、口内が瞬時にリフレッシュされ、次のひと口を新鮮な感覚で味わえます。
また、果物に含まれる酵素や適度な酸味が、牛骨ベースの重層的な濃厚スープの後味を驚くほど軽やかに整えます。盛岡冷麺の発祥とされる「食道園」の創業期から受け継がれるこの組み合わせは、味覚のメカニズムに基づいた見事な知恵といえます。