南口の住宅街へと続く通りを進むと、温かみのある佇まいで街に溶け込む「ブーランジェリー プクガリ」が見えてくる。千歳烏山のパンシーンを語る上で、この店の存在を外すことはできない。いわゆるリテールベーカリーの理想形がここにある。
対面販売のショーケースには、ハード系の本格派から、子どもが握りしめて歩くような親しみやすい総菜パン、繊細なヴィエノワズリーまでが隙間なく並ぶ。職人が客の顔を見て「今日のフォカッチャは焼き上がりが最高ですよ」と声をかけ、住民は今日の夕餉に合わせるパンを相談する。単にトレンドを追うのではなく、暮らしの延長線上で本当に必要とされるパンを毎日同じ精度で焼き続けること。大手製パン会社主導のベーカリー産業とは一線を画す、小回りの利く個人店ならではの強靭さがそこにある。