サマーカットを巡って最も議論されるのが、「シュナウザーのサマーカットで毛質が変わる真相」と「毛が生えてこない」という噂です。これは単なる迷信ではなく、犬の皮膚科学において明確な根拠が存在します。
ミニチュアシュナウザーは、硬く太い上毛(オーバーコート)と、柔らかく密生した下毛(アンダーコート)からなる「ダブルコート」の毛構造を持ちます。短時間のバリカンで毛根近くまで一気に刈り込むと、毛周期(毛が生え変わるサイクル)に異常が生じ、毛包が休止期に入ってしまう現象が発生します。獣医学分野ではこれを「毛刈り後脱毛症(クリッパー・アロペシア)」と呼びます。
この脱毛症に陥ると、バリカンを入れた部分だけ何ヶ月も毛が生えてこない状態が続きます。また、運よく生え揃った場合でも、成長スピードの速い柔らかな下毛ばかりが優勢になり、本来の針金のような硬いオーバーコートが生えにくくなります。その結果、毛色が白っぽく褪色したり、パサついた縮れ毛のような手触りに変化してしまうのです。特に過去にプラッキング(専用ナイフで毛を間引き、硬い被毛を育てる伝統的技法)を施していた個体の場合、一度バリカンを入れるだけで毛質が完全に軟毛化してしまうため、細心の注意が必要です。