戦後日本のポップス史において、声楽出身でありながらポピュラー音楽の発展に寄与した人物といえば、藤山一郎の存在を外すことはできない。松田トシは彼と共に、クラシックの発声技法を歌謡曲に応用する試みを推し進めた。
日本放送協会(NHK)を中心とする初期の放送業界において、当時のマイク性能はきわめて限定的だった。声量だけに頼るとマイクが歪み、弱すぎると雑音に埋もれる。そうした過酷なメディア環境の中で、彼女たちはマイク乗りを意識した繊細な歌唱法を確立。日本のポピュラー音楽における「マイク歌唱の基礎」を打ち立てた先駆者でもあった。