SNSや動画サイトでは「100均毛糸だけで高見えセーターが編めた」といったコンテンツが数百万回再生されるなど、100円ショップの毛糸は大きな脚光を浴びています。しかし、現場の取材と数値分析を進めると、一般にはあまり語られない盲点が浮かび上がってきます。
100均毛糸ネットの反応を深掘りすると、「編んでいる途中でロットが店頭から消えて未完成になった」「1玉あたりの長さが短すぎて糸始末が膨大になる」という切実なトラブル報告が多数寄せられています。実は、100円ショップで販売されている毛糸の多くは1玉あたり20〜25グラム(糸長約40〜50メートル)程度に設定されています。これに対し、一般的な手芸メーカーの毛糸は1玉40〜50グラム(約100〜120メートル)が標準です。
セーター1着を編むために必要な毛糸の総重量を約500グラムと仮定した場合、メーカー毛糸なら10〜12玉程度で済みますが、100均毛糸では20〜25玉前後の購入が必要になります。つまり、購入費用は2,500〜3,000円近くに達し、ユザワヤのセール品やネット通販のウール100%着分セットと価格差がほぼなくなってしまうのです。さらに、糸と糸を結んでつなぐ箇所が20箇所以上増えるため、編み地の美しさや耐久性が損なわれるリスクも跳ね上がります。
誤解してはならないのは、100均毛糸が劣悪だということではありません。セリアの季節限定糸やダイソーの「ポストカード」シリーズなどは、少量で編めるアームウォーマー、靴下、あみぐるみ、あるいはかぎ針編みのモチーフつなぎブランケットにおいて、驚異的なコストパフォーマンスを発揮します。「大作ウェアには手を出さず、小玉で完結する小物や配色アクセントに絞る」ことこそが、100均毛糸を賢く使い倒すプロの知恵です。