本作が日本音楽界に与えた最大の衝撃は、メロディに乗る日本語の音節処理と、英語詞とのシームレスな融合でした。当時弱冠15歳だった宇多田ヒカル自らが紡いだリリックは、ティーンエイジャー特有の生々しい生活感と、極めて成熟した心理描写が同居しています。
冒頭の「七回目のベルで受話器を取った君」というフレーズは、固定電話が主役だった1990年代末のリアルな空気感を鮮明に切り取っています。コールが鳴り響く間、相手が家にいるのか、誰かと話しているのか、出ようか迷っているのか——その極限の焦燥と逡巡を「7回」という具体的な数字で表現する観察眼の鋭さは、文芸的にも高く評価されました。
サビで繰り返される印象的な英語フレーズの解釈を見ていきます。
「It's automatic / 側にいるだけで その目に見つめられるだけで / ドキドキ止まらない Noとは言えない / I just can't help」
直訳すると「それは自動的(不可抗力)」「ただ我慢できない、どうしようもない」を意味します。理性の制御を軽やかに飛び越え、身体が先に反応してしまう恋愛初期の抗えない引力を、彼女は「オートマティック(自動装置)」という無機質とも思える現代的な語彙へ見事に昇華させました。日本語の助詞(「が」「で」「を」)をビートの裏拍に配置する革新的なフロウは、それまでの歌謡曲的J-POPが抱えていた「日本語の持つ重さ」を完全に解体してみせたのです。