このセリフが伝説となった背景には、テレビ朝日版の翻訳を手掛けた平田勝茂氏の類まれなる言語センスがあります。英語の原版と吹き替えテキストを照らし合わせると、直訳を捨てて口語の勢いと日本語の語感を最優先した職人技が浮き彫りになります。
原語の英語台本では、ディアズは次のように発言しています。
"They're nothing, garbage. We could take them in a blink."
直訳すれば「奴らは何者でもありません、クズです。瞬きする間に片付けられます」となります。意味としては通じますが、日本語のセリフとして耳にした場合、凡庸な悪役のセリフの域を出ません。
平田勝茂氏は「garbage(ゴミ、クズ)」という単語を、護衛兵が突っ立っているだけの無力な様を比喩した「カカシ」へと見事に意訳しました。さらに「in a blink(瞬く間に)」を「瞬きする間に皆殺し」と過激かつリズミカルに翻案することで、声優が発声した際の破裂音の心地よさと、悪党特有の過信を完璧に表現したのです。
テレビ吹き替え全盛期における「秒数あたりの文字数制限(リップシンク)」をクリアしつつ、視聴者の感情を揺さぶる言葉を当てはめる平田氏の手腕は、まさに職人技の極致でした。この絶妙な翻訳が、玄田哲章氏演じるメイトリックスの「とんでもねえ、待ってたんだ」などの名言群とともに、『コマンドー語録』という一大ジャンルを築き上げる礎となったのです。