喧嘩札の原点を探ると、神社仏閣に参拝した証として名前を打ち付けた「千社札」の文化に行き着く。特に浅草神社で毎年盛大に執り行われる三社祭では、激しく揉み合う神輿の担ぎ手たちが互いの所属を示すため、頑丈な木札を首から下げるのが定番となった。万が一の怪我や喧嘩の際にも名乗りを上げられることから「喧嘩札」の名がついたとされる。
また、昭和の名作映画『男はつらいよ』の主人公・寅さんが首から提げていた首札も、どこか哀愁を帯びた粋なスタイルの象徴として日本人の記憶に深く刻まれている。身一つで旅を続ける男の相棒として描かれたあの首札は、現代の私たちが求める「個のアイデンティティ」そのものでもあるのだ。