この騒動が一過性の話題にとどまらず、社会問題にまで発展した背景には、器物損壊罪に抵触する「違法な落書き」を公的機関が保護・賛美したという矛盾がありました。
日本の刑法において、公共物への無許可の描画は明確な違法行為です。行政が日頃から多額の税金を投じて落書き消去事業を行う一方で、世界的アーティストの疑いがあるという理由だけで防潮扉を税金で保護・展示した姿勢に対し、「行政によるダブルスタンダードではないか」「落書きを助長する」といった批判が法学者や一部都議から噴出しました。
一方で、市場価値が数千万円から億円規模に跳ね上がるバンクシーのアートを「文化資源」「観光資源」として保護した判断を支持する声も根強く、ストリートカルチャーと法秩序の境界線をどう引くべきかという現代的な問いを日本社会に突きつける契機となりました。