広大な美瑛の丘に孤高のシルエットを描くこの木が、なぜ「ケンとメリー」と呼ばれるようになったのか。そのルーツは1972(昭和47)年9月から放映された日産自動車の4代目「スカイライン」(C110型)のテレビCMに遡ります。
当時、作中の若い男女のカップル「ケンとメリー」が愛車とともに日本各地の美しい自然を旅するシリーズ広告は、社会現象とも呼べる爆発的なブームを巻き起こしました。BUZZが歌うCMソング『ケンとメリー〜愛と風のように〜』のメロディとともに画面いっぱいに映し出されたのが、美瑛の丘にスクッと立つ一本のポプラでした。CMの大ヒットに伴い、この車両は「ケンメリ」の愛称で親しまれ、ロケ地となった木もいつしか「ケンとメリーの木」と呼ばれるようになったという歴史的経緯があります。
当時の日本のツーリズムは、団体旅行からマイカーによる個人ドライブ旅行への過渡期にありました。広告制作者たちが切り取った「北の大地に佇む一本の巨木とどこまでも続くスカイライン」という構図は、都市部の人々に強烈な旅情と自由への憧れを植え付けました。美瑛町が全国区の観光地へと飛躍する決定的な契機となった記念碑的な存在、それがこの木なのです。