世界的スターの生家というと芸能一家や商家のイメージを持たれがちですが、渡辺謙の実家は実直な教師家庭でした。父・渡辺亮一さん、そして母ともに小学校の教員を務めており、村内でも教育熱心な家庭として知られていました。
特に父の亮一さんは教育者であると同時に、書道や絵画にも造詣が深い文化人でした。家庭内には常に本や画集、墨の香りが漂い、厳格な礼儀作法を重んじる一方で、子どもの自主性や表現力をおおらかに見守る気風があったといいます。両親の転勤に伴い、少年時代には新潟県内の入広瀬村や高田市(現・上越市)などへ転居を重ねることもありましたが、どこへ行っても自然と芸術に親しむ環境が整っていました。
父の背中を見て育った少年・謙は、物事の本質を深く観察する洞察力と、言葉を大切にする表現力を自然と身につけていきました。教壇に立って多くの子どもたちを導いてきた両親の知性と情熱は、形を変えて息子の演技論や表現者としての矜持にしっかりと受け継がれています。