TOM FORDの既製スーツは、現在一着あたり70万円から100万円超というプライスレンジに位置しています。これほどまでに高額である理由は、単なるブランドネームの価値だけではありません。
最大の理由は、イタリア屈指の高級テキスタイルメーカー兼ファクトリーであるErmenegildo Zegna(エルメネジルド・ゼニア)をはじめとする最高峰工房での徹底したハンドメイド工程にあります。接着芯を一切使わない「フルキャンバス(毛芯)仕立て」を採用し、着込むほどに着用者の体型へと馴染む立体構造を実現しています。
さらに、襟の裏地付け、袖ぐりのいせ込み、繊細なミラネーゼ・ボタンホール(手縫いのフラワーホール)、天然の水牛ボタンなど、随所にサヴィル・ロウのビスポークに匹敵する手仕事が惜しみなく注ぎ込まれています。既製品でありながらオーダーメイド以上の佇まいと着心地を誇る背景には、こうした妥協なきクラフツマンシップが存在します。