脇を固めるベテランキャストの存在も、この映画に深い味わいを与えている。ロシアから逃れてきた元貴族の男性マラノフを演じたヴィンセント・プライスは、かつて怪奇映画のスターとして名を馳せたイメージを一変させ、品格と哀愁を漂わせる老紳士を軽妙に演じ切った。
彼が姉妹の家を訪れ、食卓を囲む静謐な場面の会話は非常に味わい深い。失われた時代の栄光を懐かしみつつも、残された時間に向き合う登場人物たちの佇まい。映画『八月の鯨』は、主演の二人だけでなく、周りを囲む演者全員の人生の重みが重なり合うことで、唯一無二のノスタルジックな雰囲気を獲得している。