法律上は義務ではないにもかかわらず、なぜこれほどまでに「路上停車=ハザード点滅」が日本の路上に定着してしまったのでしょうか。大手SNSやQ&Aサイト、ドライバーが集うオンラインコミュニティを調査すると、当事者意識のズレと強烈な軋轢が浮き彫りになります。
停車する側のドライバーからは、次のような「善意の弁明」が頻繁に語られます。
- 「後続車に『自分は動かないから先に行ってくれ』と意思表示するために点けている。マナーの一環だ」
- 「左ウインカーのままだと、左折しようとしているのか止まっているのか判別がつかないと思ってハザードにする」
- 「暗い夜道や雨の日は、追突されないための自己防衛として点滅させるのが常識だと思っていた」
一方で、その後ろを走る後続車のドライバーや二輪車・自転車の走行者からは、全く異なる切実な不満と恐怖の声が上がっています。
「カーブの先や狭い単車線でハザードを焚いて止まられると、故障で動けないのか、すぐ発進するのか見分けがつかず大渋滞になる」(40代・配送ドライバー)
「路肩から急に発進するのかと思って減速したら、ただスマホを見ていただけだった。点滅を見せることで『迷惑をかけているけれど許してね』という免罪符にしているだけに見える」(30代・通勤ドライバー)
「左側をすり抜けるバイクからすると、左のランプは見えても右のランプが見えず、左折合図と勘違いして巻き込まれそうになる」(20代・バイク便ライダー)
さらに混迷を極めているのが、道路上での合図として慣習化している「サンキューハザード」の存在です。高速道路での車線変更時や合流時に譲ってもらった際、ハザードを2〜3回点滅させる行為は広く認知されていますが、これも法令で定められた正当な合図ではありません。状況によっては「前方に障害物がある合図」「急減速の警告」と誤認され、後続車がパニックブレーキを踏む危険性が指摘されています。警察庁および各都道府県警察も「サンキューハザードは本来の用途外であり、無理に行う必要はなく、会釈や手前での余裕をもった運転で感謝を伝えるべき」と啓発を強めています。