取材班が足を踏み入れたのは、開店前の静謐な店内。厨房では、シェフが仕込みの手を休めることなく、看板メニューの仕上げに神経を研ぎ澄ませていた。看板を飾るのは、クラシック映画のワンシーンをモチーフにした月替わりの限定プレートだ。単に見た目を似せただけのメニューではない。当時の時代背景や劇中の登場人物が口にしたであろう素材の質感、さらには香り立ちまでを忠実に再現している。
「映画を観て心が動くように、ひと皿の料理を味わう体験でも記憶の扉を開けたい」。厨房を仕切るマスターはそう語る。素材の仕入れルートにも妥協はない。全国の契約農家から届くオーガニック野菜をベースに、フィルムの巻き取りリールを模した特注の陶器プレートへ美しく盛り付けられていく。この圧倒的なこだわりこそが、来訪者の舌と心を掴んで離さない最大の理由なのだ。