本作において最も深く考察すべきポイントは、これほどダークな物語に、なぜ最も祝福されるべき単語である「プロポーズ」を冠したのかという点です。ここには、従来のポップスが描いてきた「定型化された愛」に対する強烈なアンチテーゼが存在します。
一般的な社会通念において、プロポーズとは「将来の安定」や「公的な承認」を求める行為です。しかし、なとりが描く二人の世界は、社会的な規範や承認欲求の外側にあります。誰にも理解されず、世間からは祝福されないかもしれない関係性であっても、二人にとってはそれが唯一無二の真実であるという逆説です。
昭和歌謡や純文学が描いてきた「心中美学」のエッセンスを、現代的なビートミュージックに落とし込んだこの構造こそ、なとりの独創性と言えます。形式的な契約ではなく、魂の不可逆的な結びつきを表現するために、このタイトルは必然だったのです。