物語の結末で、アシタカとサンは安易に結ばれず、それぞれ別の場所で生きていく道を選ぶ。「共に暮らす」というハッピーエンドを選ばなかったことに対し、公開当初は戸惑う観客も少なくなかった。しかし、この距離感こそが作品の提示した真の回答だった。
異質な存在同士が分かり合えなくとも、互いの存在を認め合い、同じ空の下で共に生き延びること。破壊された森とタタラ場が少しずつ再生していく過程と重なるこのラストメッセージは、分断が進む現代社会において一層重い意味を持つ。「共に生きよう、生き抜こう」という無言の誓いこそが、あの劇的な言葉の真の着地点だったのだ。