ネット上の口コミで頻出する誤解の一つに、「価格が高いのだから完全メンテナンスフリーで何十年も美しさを保てるはずだ」という過剰な期待があります。しかし、工業製品のナイロンやポリウレタンコーティングとは異なり、天然皮革の寿命と耐久性は「ユーザーの関わり方」に大きく依存します。
土屋鞄の財布の構造的な寿命は、適切な扱いを前提とすれば7年から10年以上に及びます。ランドセル製造で培われた強固な返し縫いやコバ磨きは、並みのファッションブランドを遥かに凌駕する強度を持っています。それでも「すぐにボロボロになった」と嘆くユーザーの多くは、高温多湿な車内に放置したり、濡れた手で扱った後の乾燥を放置したりといった、革への致命的なダメージを与えてしまっているのが実情です。
もう一つの盲点は「経年変化(エイジング)の捉え方」です。ネットの写真で見かける深みのある飴色のグラデーションは、日々の手の脂や適度なブラッシングによってじっくりと育てられたものです。何の手入れもせず摩擦に晒し続ければ、単に黒ずみや毛羽立ちが生じるだけになります。「経年劣化」と「経年変化」の違いを理解しないまま購入すると、数年後に思い描いていた姿との乖離に落胆することになります。