安藤美姫というスケーターの芯にある強さは、幼少期の悲劇的な別れと無縁ではない。彼女がスケートを始めて間もない9歳の頃、最愛の実父がバイク事故によって突然この世を去った。幼心に突きつけられたあまりにも残酷な現実は、少女の日常を一変させた。
生前、父はリンクで滑る彼女の姿を誰よりも楽しみに見つめていたという。「お父さんが見ていてくれるから滑る」――その一途な思いが、過酷な練習を耐え抜く彼女の唯一無二の推進力となった。国際スケート連盟が管轄する国際舞台の頂点へと駆け上がる道程で、彼女が胸に抱き続けたのは、天国の父への誓いに他ならない。どんな挫折に見舞われても氷の上に立ち続けた理由は、この原点にあった。