薬物療法における強力な武器として長年臨床を支えてきたのが、Rhoキナーゼ阻害薬であるファスジル塩酸塩だ。血管平滑筋の収縮メカニズムを分子レベルでブロックするこの薬剤は、脳血管攣縮による脳血管の収縮とそれに伴う脳虚血症状の改善において、日本が世界に先駆けて実用化した誇るべき治療薬である。
さらに現在の脳神経外科学では、薬物投与にとどまらず、カテーテルを用いた血管内手術(血管形成術や血管拡張薬の局所注入)とのハイブリッド治療が劇的な効果を上げている。攣縮を起こした極細の血管に対し、微小なバルーンで直接内腔を広げる手法は、危機的状況にある脳組織を救い出す最後の砦だ。