ハニートラップが決して都市伝説ではないことを証明するのが、過去に発生した国際的な大事件の記録です。日米双方で、国家の根幹を揺るがす甚大な被害が確認されています。
日本における最も痛ましい実例として語り継がれているのが、2004年に発生した在上海日本総領事館員自殺事件です。当時、通信暗号を担当していた40代の男性書記官は、上海市内のカラオケ店で知り合った中国人女性と親密な関係になりました。その後、中国の治安当局者が書記官に接触し、女性の身柄拘束をほのめかしながら、日本の外交暗号システムの引き渡しを強要したとされています。
書記官は「国を売ることはできない」という悲壮な遺書を残し、領事館内で自ら命を絶ちました。この事件は、現場の公務員や外交官がいかに冷酷かつ執拗なアプローチに晒されているかを日本社会に知らしめる契機となりました。
一方、アメリカでインテリジェンス史上最大の失態の一つと評されるのが、2003年に発覚した「カトリーナ・レオン(中国名:陳文英)事件」です。中国系米国人のレオン容疑者は、米連邦捜査局(FBI)の優秀な防諜担当捜査官2名と数十年にわたり愛人関係を結びながら、米国の対中工作情報を中国国家安全部に流し続ける二重スパイとして暗躍していました。FBIのトップ捜査官ですら手玉に取られたこの事案は、情と人間関係を利用する工作の恐ろしさを世界に知らしめました。