陰性症状へのアプローチは、薬物療法と非薬物療法(心理社会的リハビリテーション)を適切に組み合わせる多角的戦略が標準となっています。
従来の定型抗精神病薬(第一世代)は陽性症状を強力に抑える一方で、ドパミン受容体を過剰に遮断することで二次的な陰性症状(表情の硬さや意欲低下)を誘発するリスクがありました。現在では、セロトニン・ドパミン拮抗薬(SDA)や、ドパミン神経の過不足を微調整するドパミン部分作動薬(DPA)などの非定型抗精神病薬(第二世代)が主流となり、陰性症状や認知機能への悪影響を抑えつつ安定を保つ処方が行われています。
薬物によって基礎的な脳の安定が図られた後は、段階的なリハビリテーションへとステップを進めます。
- 精神科デイケア:規則正しい生活リズムの再獲得と、他者と同じ空間に無理なく居続ける「プレ社会参加」の場として機能する
- 生活技能訓練(SST):対人関係のストレスを減らすための具体的な会話法や、服薬管理・金銭管理などのスキルをロールプレイで学ぶ
- 認知リハビリテーション:パソコン課題や作業療法を通じて、集中力・記憶力・段取り力を少しずつトレーニングする
- 就労移行支援:仕事復帰を目指す段階において、個々の症状特性に合わせた職場環境選びや業務訓練を専門スタッフとともに進める
社会復帰の道のりは「完全な回復を待ってから働く」のではなく、「症状と折り合いをつけながら、負担の少ない環境から段階的に社会との接点を取り戻す」プロセスへと移行しています。