WEBサイト『日刊SPA!』での連載開始直後から異例の反響を呼び、2019年に扶桑社から書籍化された原作エッセイ『死にたい夜にかぎって』。本作の最大の特徴であり最大の引力となっているのは、原作者である爪切男氏自身の過酷かつ奇天烈な実体験がベースになっている点にあります。
物語の起点となるのは、小学生時代に憧れのクラスメイトから放たれた「君の笑った顔、虫の裏側に似てるよね。カナブンとかの裏側みたい」というあまりにも残酷な一言でした。幼少期に母親が突然失踪し、父親と二人暮らしの中で育った主人公・小野浩史(ドラマ版での主人公名)は、この言葉によって自身の笑顔を完全に封印してしまいます。自己評価が著しく低く、他者との関係性に怯えながら成長した彼は、やがて過激で個性的すぎる女性たちと次々に出会っていくことになります。
文壇関係者や当時の取材記録によると、劇中に登場するエピソードの多くは驚くべきことにほぼ9割以上が爪切男氏の身に実際に起きた出来事です。ネットで知り合い、自分の唾液を売って生活費を稼いでいた最愛の女性「アスカ」、変態行為に異常な情熱を燃やす女性たち、そして風俗店で出会った心優しい女性たちなど、一見すると荒唐無稽に思えるエピソードの数々は、作者本人が人生の痛みをユーモアへと昇華させた魂の記録そのものなのです。