数ある名古屋の喫茶店の中でも、異次元の存在感を放ち続けるのが昭和区に店を構える「喫茶マウンテン」だ。一般的な飲食店の常識を完全に破壊したこの店は、グルメサイト食べログのレビュアーたちを幾度となく混乱に陥れてきた。
名物の「甘口抹茶小倉スパ」をはじめ、イチゴやバナナのソースで炒められた甘いパスタの数々。完食することを「登頂」、途中でギブアップすることを「遭難」と呼ぶ独特のカルチャーは、昭和・平成を経て、YouTubeを中心とする動画配信時代に爆発的な再ブレイクを果たした。カメラを構えた若者やインフルエンサーたちが、皿の上にそびえ立つ甘味の山に挑み、苦悶しながらも笑顔でフォークを進める。
一過性の悪ふざけと片付けるのは容易だ。しかし、この店が半世紀以上にわたって学生や若者たちに愛され、看板を掲げ続けている事実は重い。食をエンターテインメントとして昇華させ、誰もが笑顔(あるいは苦笑い)になる空間を作り出す。マウンテンの存在は、喫茶店が持つ懐の深さと自由さを何よりも雄弁に物語っている。