衣類なら問題なく貼り付くアイロンワッペンが、なぜ上履きではすぐに剥がれてしまうのでしょうか。最大の理由は「上履き内部が空洞で、アイロンの圧力が十分に伝わらないこと」です。アイロン接着芯に含まれる熱溶融性樹脂(ホットメルト糊)は、熱で溶かすだけでなく、繊維の奥深くまでギュッと押し込む強い圧力があって初めて本来の粘着力を発揮します。靴がへこんでしまう状態では、表面の毛羽立ちに軽く乗っているだけに過ぎません。
2つ目の原因は、上履きのキャンバス地に施されている「製造時の糊付けや撥水加工」です。新品の上履きには汚れを防ぐコーティングや生地をピンと張るための糊が付着しており、これがワッペンの接着剤を弾いてしまいます。
3つ目は「歩行による靴の伸縮としなり」です。特に子どもの足は柔軟で、歩く・走る・跳ぶといった動作のたびにつま先や甲部分が大きく折れ曲がります。硬いワッペンと柔らかく変形するキャンバス生地の間で摩擦と引っ張りが繰り返され、端から徐々に剥離していくのです。