愛憎劇の王道として多くのファンが固唾をのんで見守ったのが、「ヒロインのヨナと元恋人ハ・ユンジェは復縁するのか」という点でした。ユンジェはかつてヨナを心から愛していながらも、実妹ユンヒをひき逃げで殺害した犯人がヨナであるというユラの狡猾な偽装工作を信じ込み、ヨナを激しく憎悪してユラと政略結婚を選んだ経緯があります。
真実を知ったユンジェは、自らの盲目さとヨナに与えた地獄のような苦痛に激しい罪悪感を抱き、復讐の後半戦ではヨナの最大の味方として奔走しました。しかし、最終話において二人がかつてのような恋人同士に戻る、あるいは再婚するといった安易なハッピーエンドは描かれませんでした。
ユンジェはヨナに対して尽きることのない懺悔と愛情を抱きつつも、自らの疑念が招いた取り返しのつかない悲劇の重さを自覚しています。ヨナもまた、ユンジェへの憎しみを手放し、一人の人間として彼を赦してはいるものの、二人の間にはあまりにも多くの血と涙が流れすぎていました。何より、ヨナのために命を捧げたガンウクの存在が、二人の関係を単純な恋愛感情へと回帰させることを許さなかったと言えます。
物語の掉尾を飾るラストシーンでは、ヨナが刑務所にいるユラとガラス越しに対峙します。狂気に逃げ込み、まともな会話すら成り立たないユラに対し、ヨナは激情をぶつけるのではなく、静謐な瞳でその姿を見つめ、静かに背を向けます。そして、息子のテヤンとともに、新たなコスメティック事業のリーダーとして前を向いて歩き出す姿が映し出されました。
ドラマのタイトルである「福寿草(アドニス)」は、雪を押し分けて黄金色の花を咲かせる強靭な植物であり、花言葉には「悲しき思い出」と「永遠の幸福」という表裏一体の意味が込められています。厳しい冬のような苦難を耐え抜いたヨナが、過去の愛憎に囚われることなく自立した一人の女性として生きていく決意を示す演出こそが、本作が単なる通俗劇を超えて評価される所以です。