国の重要文化財に指定された建築物を、なぜ民間企業が宿泊施設として開発するのか。その背景には、歴史的建造物の維持管理コストと観光振興のジレンマが存在します。
明治の五大監獄(千葉、金沢、奈良、長崎、鹿児島)の中で、当時の壮麗な姿を完全な形で留めているのはこの奈良監獄のみです。しかし、広大な敷地と老朽化した赤レンガ建物を国や自治体の税金だけで未来永劫メンテナンスし続けることには財政的な限界がありました。
そこで導入されたのが、建物の所有権を国(法務省)に残したまま民間企業が運営収益で維持保全を行う「コンセッション方式」です。収益性の高い高級リゾートとして運用することで保全費用を生み出しつつ、一部をミュージアムとして一般開放する「ヘリテージツーリズム(遺産観光)」の先進事例として位置づけられています。
敷地内には、受刑者の生活実態や近代行刑史の歩みを展示する史料館(ミュージアムエリア)が整備され、宿泊客以外でも気軽に立ち寄れるカフェやレストランが併設されます。修学旅行生や歴史愛好家が貴重な内部を見学できる機会がしっかりと担保されています。