初期の久美といえば、控えめで心優しく、一歩の試合を祈るような目で見つめる純粋なヒロインでした。しかし、物語中盤以降から現在にかけて、その印象は180度激変しています。なぜ彼女はここまで「怖い」と言われるようになったのでしょうか。
最大の理由は、一歩を二度とリングに立たせないための徹底した防波堤化です。一歩がパンチドランカー疑惑を経て現役を引退した後、久美の関心は「一歩の健康と平穏な日常を守ること」に極端なまでに集中しました。一歩がボクシングへの未練を少しでも覗かせたり、ジムの仲間(板垣学や鷹村守ら)が一歩を復帰へ焚きつけようとしたりする気配を察知すると、背後に禍々しい漆黒のオーラを立ち昇らせます。
その形相は、まさに実兄である「死神」間柴了そのもの。読者からは「間柴家の血が完全に覚醒した」「ヒロインというより裏のラスボス」と恐れられる事態となりました。
さらに、看護師として脳や肉体の損傷の恐ろしさを誰よりも熟知している点も、彼女の頑なな態度に拍車をかけています。愛する人が壊れていく恐怖を現場で知っているからこそ、狂気にも似た執念で一歩の復帰を阻み続けているのです。単なる性格の悪化ではなく、極限の愛情と恐怖が歪な形で表出した結果といえます。