まず頭に入れておきたいのは、「懐石」と「会席」の決定的な違いである。酒を楽しむための宴席料理である会席に対し、懐石料理は本来、茶の湯において抹茶を美味しくいただくために出される一品ずつのもてなしを指す。この背景を知るだけで、テーブル上での身のこなしは一変するはずだ。
空腹の胃に強いお茶を流し込まないよう、亭主が最小限の温かい飯と汁を差し出す。その簡素かつ極上の温もりに感謝を捧げることこそが原点なのだ。贅沢を誇るのではなく、無駄を削ぎ落とした空間と時間をともに創り上げる。だからこそ、出された料理は温かいうちに、冷たいうちにいただくことが最大の礼儀となる。