「知る」の尊敬語として双璧をなすのが「ご存知」と「お知りになる」です。どちらも相手が何かを知っている状態を高めて表現する敬語ですが、語構成とニュアンスに明確な差異が存在します。
「ご存知」は、「知ること・承知」を意味する名詞「存知」に接頭辞「ご」を冠した名詞由来の敬語表現です。そのため、「ご存知だ」「ご存知ですか」というように助動詞や補助動詞を伴って活用します。会話・メール問わず非常に幅広く使われており、テンポの良いやり取りに適しています。
一方の「お知りになる」は、動詞「知る」の語幹に尊敬の接頭辞「お」と補助動詞「になる」を接続させた和語系の尊敬語です。「〜についていつお知りになりましたか?」のように、知ったという動作の起点やプロセスそのものに焦点を当てる文脈で非常に自然に機能します。
ここで最も注意すべき落とし穴が、謙譲語「存じ上げる」との取り違えです。若手から中堅ビジネスパーソンの現場観察データでも、「〇〇部長は来週のイベントの件を存じ上げていますか?」といった致命的な誤用が散見されます。「存じ上げる」は自分の立場を下げる言葉であるため、上司や取引先を主語にして使うと、結果として相手を見下すような構造になってしまいます。「〇〇部長は〜をご存知でしょうか」「〜をお知りになっていますか」と正しく言い換える意識を徹底しましょう。