現在でこそ国民的知名度を誇る「糸」ですが、最初から華々しい大ヒットシングルとして世に放たれたわけではありません。その原点は、1992年10月7日にリリースされた中島みゆきの20作目のオリジナルアルバム『EAST ASIA』のラストナンバー(10曲目)でした。
当時の制作関係者の回想録や各種インタビュー記録によると、この楽曲は中島みゆきが知人の結婚を祝うために個人的に書き下ろしたプライベートな贈り物が出発点でした。商業的なヒットを狙った企画曲ではなく、一組の男女の門出へ向けた純粋な祈りから生まれたからこそ、過度な装飾を排した純度の高い言葉が選ばれています。
アルバム発売から約5年半の歳月が経過した1998年2月4日、TBS系ドラマ『聖者の行進』の主題歌に起用されたことを機に、「命の別名」との両A面シングル(通算35作目)としてシングルカットされました。ドラマの重厚なテーマ性と響き合い、人間の尊厳を問う「命の別名」と、人と人との繋がりを肯定する「糸」の対比は、多くの視聴者に鮮烈なインパクトを残しました。