日々の生活の中でおならの臭いや頻度が急変すると、「まさか大腸がんの初期症状ではないか」と不安が募るものです。医学的な見地から結論を述べると、大腸がんによっておならの臭いや回数に変化が生じる現象には明確なメカニズムが存在します。
通常、健康な状態の腸内では善玉菌と悪玉菌が一定のバランスを保っています。しかし、大腸の管腔内にがん(悪性腫瘍)が発生して進行すると、腸の内腔が物理的に狭くなる「腸管狭窄(きょうさく)」が起こります。便やガスがスムーズに肛門側へ移動できなくなると、腸内に内容物が長期間停滞し、腸内細菌叢の悪玉菌が異常増殖を始めます。
大腸がんでおならがよく出る理由として、この腸管の狭窄によるガスの排出障害と異常発酵が挙げられます。狭い隙間から無理にガスが押し出されるため、回数が細かく増えたり、お腹が異常に張る「ガス溜まり」を感じやすくなったりするのです。
さらにおならが放つ強烈な腐敗臭の背景には、がん組織そのものの壊死(組織の崩壊)や出血があります。がんの表面が崩れて血液や分泌物が腸内に流れ込むと、悪玉菌がこれらタンパク質を分解し、スカトール、インドール、硫化水素といった有毒ガスを大量に生成します。その結果、「硫黄の臭い」「卵が腐ったような悪臭」として体外へ排出されることになります。