谷の最奥部で視界を埋め尽くすのは、一の滝(落差44m)、二の滝(落差23m)、三の滝(落差13m)が三段に連なり、合計落差80メートルを一気に滑落する圧巻の水柱だ。見上げるほどの巨岩を削りながら白い帯となって落下する水の塊は、自然が気の遠くなるような時間をかけて彫り出した芸術作品にほかならない。
この地に漂う凛とした空気には、歴史のロマンが色濃く染み付いている。若き日の剣豪・宮本武蔵がこの地に籠もり、激しい水流に打たれながら二刀流の開眼を得たという伝承が今に息づく。谷の側道を進んだ先にある「円明の滝」と「二天の滝」の名称は、彼が創始したとされる円明流および二天一流に由来する。五宝の滝(一の滝・二の滝・三の滝・円明の滝・二天の滝)を巡る道筋は、単なるウォーキングコースではなく、武蔵が極限状態で対峙した自然の厳しさと静寂を追体験する時間でもある。