高山みなみのキャリアを語る上で欠かせない最大の特異性は、「国民的アニメの主人公を同時に複数掛け持ちし、いずれも数十年単位で演じ続けている」という点にあります。業界関係者が「声優界の奇跡」と称するこの記録は、彼女の類まれな表現力とタフな喉のコントロール技術によって支えられてきました。
筆頭に挙げられるのは、言わずと知れた『名探偵コナン』の江戸川コナンです。1996年の放送開始以来、30年近くにわたり「見た目は子供、頭脳は大人」という極めて難解な二重構造のキャラクターを演じ分けています。冷静沈着な推理パートで見せる大人の色気と、蘭や大人たちの前で繕う無邪気な子供のトーン。この瞬時の切り替えこそが、コナンという稀代のキャラクターの立体感を生み出しています。
さらに遡れば、1993年から続く『忍たま乱太郎』の猪名寺乱太郎も外せません。コナンとは対照的に、素直でドジでお人好しな少年を親しみやすく愛嬌たっぷりに表現し、平日の夕方に世代を超えた安心感を届けてきました。また、1993年放送の『剣勇伝説YAIBA』における鉄刃(くろがねやいば)役は、原作者・青山剛昌との運命的な出会いとなった作品であり、野性味あふれる元気いっぱいのチャンバラ少年を見事に熱演しました。
そして、誰もが一度は驚く事実が、宮崎駿監督の名作『魔女の宅急便』(1989年)の主人公・キキです。13歳という思春期の揺れ動く感情、挫折、そして自立へと向かう瑞々しい少女の息遣いを吹き込み、ジブリヒロインの象徴として世界中に認知されています。「元気な少年声」というパブリックイメージを持つファンにとって、キキの繊細な声色が同一人物によるものだと知ったときの衝撃は計り知れません。