仙台市野草園の存在を語る上で外せないのが、園が位置する「大年寺山」の歴史的背景です。大年寺山は江戸時代、仙台藩第4代藩主・伊達綱村公によって建立された黄檗宗の名刹「両足山大年寺」の寺領として手厚く保護されてきました。藩政時代から続く厳格な森林保護政策によって過度な開発を免れ、原生に近い豊かな落葉広葉樹林が温存されたのです。
終戦後の荒廃期を経て、1954年(昭和29年)に「東北の野生植物の保護と育成」を主目的に開園されたのが現在の野草園です。当時の初代園長をはじめとする研究者たちは、外来種や派手な園芸品種で観光客を呼ぶ安易な開発を退け、東北各地の山野から収集した自生種を本来の生育環境ごとに移植・再現することに心血を注ぎました。
高山植物区、湿生植物区、水生植物区、海浜植物区など、地形の起伏と湧水を活かしたエリア設計は、単なる植物の展示場ではなく「生きた生態系標本」としての役割を果たしています。杜の都・仙台の緑の骨格を成す大年寺山の歴史が、野草園の自然環境を今なお支え続けています。