『江戸の黒豹』の物語は、化政・天保期の爛熟と退廃が漂う江戸市中を舞台に展開します。夜な夜な悪徳商人や腐敗した権力者を懲らしめ、庶民を救う謎の義賊「黒豹」。その正体は、昼はしがない浪人として身を潜めながら、胸の内に熱い正義と暗い宿命を抱える青年・神谷兵馬(鳳蘭)でした。
兵馬は、権力闘争の渦中で命を狙われる幕閣の要職・松平定信(安奈淳)の周辺を警護する密命を帯びつつ、自らの正義を貫くために黒装束を身に纏います。そんな中、兵馬は純真無垢な町娘・小夜(初風諄)と出会い、互いに心を通わせ合います。しかし、闇に生きる義賊としての宿命が、平穏な恋を許すはずもありません。
物語のクライマックスでは、江戸を揺るがす巨大な陰謀と黒幕の罠が兵馬を追い詰めます。激しい立ち回りの末、悪の根源を断ち切ったものの、兵馬は愛する小夜の未来と江戸の平和を守るため、自ら姿を消す道を選びます。夜明けの江戸の街を背に、愛を告げることもなく静かに闇へと去っていく黒豹の引き際――。柴田侑宏作品特有の「男の孤独と潔い去り際」を描いたビターエンドは、観客の涙を誘い、劇場を深い感動の余韻で包み込みました。