『薬屋のひとりごと』の魅力は、単発に見える事件が一本の糸で繋がっていく緻密なミステリー構造にあります。特に読者の関心が高い重要トピックを整理すると、以下の血縁と因縁が浮き彫りになります。
第一に、猫猫の父親を巡る確執です。猫猫を育て、医術と薬草の知識を授けたのは養父・漢羅門(カン・ルォメン)ですが、実の父親は軍師として異能を発揮する漢羅漢(カン・ラカン)です。羅漢は人の顔が碁石に見える特異な認知特性を持ちながら、愛した女性・鳳仙(フォンシェン)と猫猫の顔だけは明確に認識できるという、狂気と純愛が同居した人物です。猫猫が向ける冷徹な拒絶と、不器用極まりない羅漢の親心は、本作屈指の人間ドラマといえます。
第二に、皇太后(安氏)が抱える凄惨な過去と秘密です。先帝の極端な幼女趣味によって幼くして後宮に入れられ、深いトラウマを負った皇太后の存在は、後宮という制度そのものが孕む残酷さを象徴しています。園遊会で発生した毒殺未遂事件や、トリカブトを用いた陰謀、翠苓(スイレイ)や子翠(シスイ)らが関与する一連の事件は、過去の因習に虐げられた者たちの復讐劇という側面を持っています。