物語最大の謎であり、視聴者に最も強い恐怖を植え付けたのが、テセウスの船 加藤みきお 動機の異様さです。平成元年に北海道の寒村で起きた「音臼小学校無差別殺人事件」は、児童や教員ら多数が青酸カリを混入した牛乳によって命を奪われるという未曾有の惨劇でした。この悪夢のような計画を首謀したのが、当時わずか11歳の小学生・加藤みきおだったという事実は、ミステリーの枠を超えて人間の闇を浮き彫りにしました。
みきおを突き動かしていたのは、金銭でも社会への怨恨でもありません。その核にあったのは、クラスメイトである加藤みきお 田村鈴(事件当時は佐野鈴)への異常かつ絶対的な執着心でした。児童養護施設から引き取られ、愛情に飢えた環境下で育ったみきおにとって、底抜けに明るく純粋な鈴は唯一無二の光でした。しかし、その想いは健全な好意ではなく、「自分だけのものにしたい」「彼女にとって絶対的な存在になりたい」という病的な独占欲へと歪んでいきます。
みきおが導き出した戦慄のシナリオは、「鈴を絶望の淵に突き落とし、その後に自分が唯一の味方として救い出すことで、永遠に依存させる」という自作自演の救済劇でした。そのためには、鈴にとって絶対的なヒーローであった実父・佐野文吾(鈴木亮平)の存在が邪魔でした。文吾に無実の罪を着せて死刑囚へと失脚させ、鈴の家族を崩壊させることこそが、みきおの真の目的だったのです。小学生特有の残酷な無邪気さと、大人顔負けの冷徹な知性が融合した結果、村全体を巻き込む大量殺人という常軌を逸した凶行が引き起こされました。