インターネット上の掲示板や知恵袋で頻繁に見かけるのが「療養病棟は3ヶ月経つと強制退院させられる」という噂です。この言説の真偽を確かめるには、医療保険の制度設計と病院経営のインセンティブを切り分けて理解する必要があります。
法律上、療養病棟において「3ヶ月(90日)で必ず退院させなければならない」という一律の規定は存在しません。数年間にわたって療養病棟に入院を継続している重症患者も実際に存在します。それにもかかわらず、なぜ多くの家族が「3ヶ月前後で退院や転院を迫られる」と感じるのでしょうか。その背景には、診療報酬制度における「90日超えの減算ルール」と「在宅復帰率の維持」という明確な病院側の事情があります。
かつての診療報酬体系から引き継がれている構造として、一般病棟では入院期間が14日、30日、90日を超えるごとに病院側が請求できる点数が段階的に下落します。療養病棟に移った後も、病院種別や病室区分によっては長期入院に対して点数の適正化(減算)が働く仕組みが組み込まれており、長期間同一の患者を留め置くことは経営的な旨味を減少させます。
さらに重要なのが、療養病棟に課されている「在宅復帰・病床機能連携加算」などの施設基準です。上位の診療報酬を獲得するためには、一定割合の患者を自宅や特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などの施設へ退院させ、病床を回転させ続けなければなりません。入院時にどれほど「長期間安心して療養できます」と説明されていても、病状が少しでも落ち着いて医療区分が下がった瞬間に、相談員から「そろそろ次の行き先を探しましょう」と退院支援計画が提示されるのが病院現場のシビアなメカニズムです。