「送信ボタンを押してから3日が経過したのに音沙汰がない」。こうした焦燥感に駆られた経験を持つ学生は少なくありません。大手大学生活協同組合や全国の高等教育機関が実施した教員実態アンケートの分析データを参照すると、大学教授が1日に受信する業務メールは平均80通から150通以上に達しています。学会通知、学内委員会の議事録、査読依頼、科研費関連の連絡、共同研究先との折衝が絶え間なく押し寄せる受信トレイの中で、学生からの連絡は常に激しい優先順位争いに晒されています。
現場の教員への聞き取り調査や各種手記において、返信が滞る「三大要因」として真っ先に挙げられるのが以下の実態です。
第1に、「件名を見ただけで誰からのどんな要件かが識別できない」ケースです。「質問です」「こんにちは」「履修について」といった曖昧な件名、あるいは件名そのものが空白のメールは、自動振り分けフィルターで迷惑メールフォルダに隔離されるか、開封すら後回しにされます。何百通もの未読を抱える教員にとって、件名だけで緊急度と所要時間が判断できない連絡はリスクでしかありません。
第2に、「学生側の自己開示不足」です。冒頭で「経済学部3年の佐藤です」とだけ名乗られても、複数の講義で数百名を教える教員には、どの曜日のどの講義の受講生なのか判別がつきません。学籍番号や履修クラスの特定に時間を要するメールは、教員の作業フローを著しく阻害するため、「時間ができたときに確認しよう」と分類され、そのまま埋没していきます。
第3に、「質問の意図が曖昧で、返信に長文のタイピングを要求する内容」です。「シラバスを見れば書いてある内容の質問」や「何を答えてほしいのか不明瞭な相談」は、教員側に多大な認知的負荷を強います。多忙を極める教授ほど、短文で即答できる連絡を先に処理し、思考と長文作成を要する連絡を先送りにする構造的傾向があります。教授へのメール返信が来ない理由は、教員側の冷淡さではなく、メールの情報構造に起因するケースが大半を占めているのです。